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娘の成長と僕の色覚異常と妹の話と雑感

娘は花が好きである。

花を見つけると「うわー、きれー。おっとーさん、おはな、さいてる、ねぇ。」

とこちらの返事を期待するでもなく声に出して、しばらく見つめている。

 

僕はそこそこの色覚異常で、この世界の「色」というものに頓着してこなかった。

学生時代、自分が買った歯ブラシやボールペンやらがいつの間にか違うものにすり替わっていたりして、あまり気にしていなかったけど、どうやら母がこっそり買い替えていたようで、そういう時、僕は大体は小中学生の女の子のように、どっピンクでガーリーな色のものを買っていたようだ。

僕自身はピンクが良い・悪いか関係なく、青だと思ったり、ただ単純にきれいだと思って買っていただけであった。

 

娘にもこの色覚異常の形質が遺伝している可能性はあるけれど、日常生活を送る上での機能障害はないから、遺伝子をつなげていくのであれば、男の子が生まれたときは一つの個性として育んでやればいい。

健常者からすると「色褪せた枯葉色の世界」もまた楽しからんや。それしか知らないのだから。

 

それほど興味はないけれど、紅葉とかちゃんと見てみたい。

ただその前に美的センスの問題から、色に関係なく美しいものを美しいととらえることができるか、それは分からない。

 

 

 

 

赤と緑と茶色、黄色と黄緑、青と紫、緑とオレンジ、緑と灰色、白と薄いピンクと水色、ほかにもまだまだあるかもしれない。ちなみに、緑とオレンジが全く違う色で、自分が見分けられないことに気付いたのは30歳になってからである。

 

他人から言われないと自覚できないので、緑とオレンジの話なんて、まぁそんなもんである。

この遺伝子は母方から受け継いだもので、母はこれを「呪い」のようにとらえて申し訳なさを感じている。

 

僕には兄とはまた違った意味で残念な妹がいるのだが、母と妹の話を総合して推察すると、母は妹の結婚に際して妹に子供を持たないように話した可能性があるが、持つかどうかは妹の自由だし、それは僕の人生には1ミリも関係ない。

それに、これは母と妹と僕の価値観の問題だ。

 

そして長くなるから理由は書かないが、僕はこの妹が嫌いである。

ちなみに母も妹が幼少のときから嫌っているのを僕は知っている。

妹はもともと健常者の範疇で、考えなしでいつも思慮が浅く、落とした唐揚げを先生に食べさせて怒られたり、小学校の修学旅行で髪の毛を洗わず同級生の間で話題になったりする子で、地域で一番の高校に一桁番台の点数で入学した母曰く「あの子は私とは人種が違う」と当時中学生だった次男の僕に言ってしまうのだから、子供の僕としては三兄弟の中ではマシなほうだと自覚してはいたものの、母を親としては残念だと思った。

 

それでも残念な妹を僕も好きにはなれずむしろ忌み嫌った時期もあり、妹の結婚で先方との親族顔合わせや結婚披露宴には出席したものの、妹がどこに住んでいるかもよく知らない。

岩手県出身の結構年下の、ぼーっとした感じの素朴な青年と結婚した。

出会い方を聞かされたが、個人的には感心しない印象で、すぐに忘れてしまった。

兄同様、妹とも20年離れると、もはや他人であり、全く関心が湧かない。

そして当然というか、妹も兄を非常に嫌っており、まあ振り返ってみると父親が奔放で母親がバランス感覚を欠き、空中分解していった、そんな家庭環境だったのだなぁ。

 

 

 

 

NHK『SONGS』で宇多田ヒカルの出演回を録画したものを定期的に見なおしている。

彼女のデビューがチャゲアス熱が一段落した僕の浪人生の頃だったかで、ドンピシャの世代である。

 

彼女のメロディーライン、あれがどのようなプロセスを経て生まれてくるのか、そこにあの言葉がどのように紡ぎだされてくるのか、大学で合唱団に入っていた僕は大変失礼ながら、彼女が重度の鬱だったり、ひょっとしたら薬物によるものなのか、あの深い詩の世界、深遠な孤独と死の匂い香りがする極めて中毒性の高い音楽だと思う。

 

DEEP REVER

ULTRA BLUE

HERAT STATION

 

このあたりは2000年代後半、ブラック企業の中で必死にもがき、脱出しようとしていたときによく聴いていた。

特にULTRA BLUEなんかは、このアルバムタイトルを見るだけで、焦って空回りしていた自分をすぐに思い出せる。

 

その『SONGS』2018年の出演回はNHKのスタジオセットが非常に凝っていて、プロジェクションマッピングを使った美しい表現に、昨夜も娘は「うゎー」と言って見入っていた。

綺麗?と聞くと娘は「おねーさん、きれい!」

セットじゃなくて、歌手かい。

 

先日ガンダムのプラモデルで1/100リアルタイプゲルググの画像をチラ見させたところ、「これ、かっこいい!」と答えたので、分かってるなぁと感心した。

 

娘の語彙力や思いやり、別れ際に「きをつけてね」とかこちらの汗だくの顔を「拭いてあげる」と僕のポケットのタオルを引っ張り出してポンポンと汗を叩き取る行為、先週からは卓上アナログ時計を手に、「いま、なんじ?」としつこく聞いてきたりして人間の発達過程を目の当たりにしている。

 

娘が大きくなっても、この文章を隠すことはしないし、もし見せろと言われたら見せる。

そして娘が嫌いだとか育児が嫌だとかいうよりも、娘に接する際の奥さんにイライラする可能性が高い。

そのあたりを深堀りしないと、前に進めない。

なんでイライラするんだろう。